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SPECIAL INTERVIEW:D.I 【room106】

2011年05月30日 20:00

 

 “10年選手”という言葉があるが、実際に何かを継続して実行しようとしても、それを10年間に渡って貫くというのは、口で言うほど決して容易いものではない。あらゆる柵に揉まれ、それでも尚前進しようと必死に努力を惜しまなかった者だけが手中に収められる栄光。実に9年のインターバルを経て自身名義のアルバム『room106』をリリースしたばかりのD.Iは、シンガーとプロデューサーの二足の草鞋を履き分けながら、そんな長い道程を堅実に踏みしめてきた由緒あるアーティストの一人だ。甘美なボーカル・スタイルには兼ねてから定評があるものの、昨今はBENIやMay J.への楽曲提供やプロデュース業での功績があまりに印象強く、彼がシンガーとして活動していた事実を知らない層ももはや存在していると聞く。長らくシーンの潮流を第一線で描き出してきた彼が、デビュー10周年を経て何故、原点であるシンガーへ立ち帰ることを決意したのか。その真意から聞いた。
「多分、心に余裕が出来たんだよね。2000年にシンガーでデビューしたんだけど、同日にAIのデビュー・シングルのカップリングもプロデュースしていて、要は裏方としての自分も同時デビューだった。その後、セカンド・アルバムの売り上げが悪くてレコード会社から次がないと言われたときも、自分にはプロデュース業があったから実はあまりショックじゃなくてさ。やっぱり歌うことって、作る以上に不条理な世界だから。良いものが売れるとは限らないし、スポーツみたいに実力があれば勝ち上がれるわけでもない。でも人に作ったものはある程度実になるし、それを心得ていく内に、歌うことに対してそこまで情熱を捧げられなくなってたんだよね。逆に作る方があったから、捧げられなかったのかもしれない。人との繋がりも増えるし評価もされるし、何より楽しいしね。歌手って売れなかったらダメってなっちゃうでしょ。そういう意味で長年テンションが落ちていたんだけど、ようやく9年ぐらい経って純粋に歌うことの楽しみを思い出したという感じかな。」

 アーティストたるもの、やはり結果を残してこそ。それは、音楽業界の不文律であり、そこに係わる全員に課せられた義務に代わるようなものでもあるが、D.Iはその現状を当事者としていち早く俯瞰し、プロデューサーという自分なりの立ち位置を着実に導き出していった。「“いつかは東京ドームで歌いたい”という目標もあった」と当時の野心も笑いながら述懐してくれた彼だが、実際は人並み以上に腹を括り、人一倍寛容な思想を携えてこの10年余りの歳月を踏みしめてきたに違いない。そしてそれら培ってきた熱意は、本作のアルバム・タイトルにも如実に投影されている。「タイトルの『room106』は、俺が昔留学してたときに住んでたアパートの部屋番号なんだ。プロの世界って色々な制約やオーダーがあるし、決して好き勝手にやってるわけじゃない。でもそういう風にやってきた中で、「あの部屋で音楽をやってた頃の気持ちを思い出しながらもう一度歌を歌いたいな」って思ったから、このアルバムには歌い手としての今の自分をありのままに出した。」

 本作は言わば、“彼がプロデューサーであったからこそ表現し得た作品”のように思う。己の資質や可能性を一番よく分かっているのは他ならぬ自分自身。ならば、黎明期からシーンに従事し、素養も十分に蓄えてある自分の手で作り上げるのが一番適切で手っ取り早いと、彼はごく当たり前の発想で、且つ単純な為様で本作を完成させたのだ。自らを信じると書いて自信。この構図こそが、彼を一流の表現者へと押し上げた何よりもの所以と言える。「自分で何曲か作ってそれをそのまま出すっていうスタンスだったし、時間的な制約もなかったから、ほかのアーティストの曲も作りつつ自分で歌いたい曲があればその場で作ったりとか、今回は本当に自由に取り組めた。トラック制作の面では、ほかのアーティストに作ってるものと気持ち的な違いはあまりないかな。というか何百曲もやってると、自分でそうしようと思ってやってるわけじゃなくても、結果おのずと自分のテイストになっちゃうんだよね。もちろん、「アップテンポが欲しい」だとか、「こういう曲やりたいな」っていうように細かいイメージをもとに作ってはいるんだけど。あとは昔と比べると、詞に拘らなくなったな。歌手をメインでやってたときは、自分のパーソナルな部分を赤裸々にしたかったから全部自分でやりたかったんだよね。今は信頼している作詞家に「この曲にこういう感じのイメージで」って伝えるだけで、あとは大体助けてもらってる。」

 彼も言っているとおり、作詞方面を中心に他者も制作に関与している本作。しかしながら、彼と交わる人間はみな、彼と同じように妥協を許さず、須く同じベクトルを共有しているがゆえ、各々のクオリティはばらけるどころか寧ろ驚くほどに一体の様相を呈している。それは、今回コラボレーションが実現したBENI/May J./Tynisha Keliの美女三名の場合においても同様だ。「もう楽勝だったね。自分がプロデュースしているアーティストって、お互いを良く分かってるから色々とやりやすいでしょ。Tynishaなんて、一人で勝手に録ったりしてたからね(笑)デュエットって、基本的にイン&アウトでバンバン入って来るしお互いのキーもかなり違っちゃうから、既存の曲をデュエットの曲にしたりはせずデュエット専用の曲を1から作ってる。そこは、結構こだわってるかな。」

 メラメラと絶えず立ち上るバイタリティ。プロデューサーとして不動の地位を築いた今なお、より高い次元を目指して自らの音楽を追求しにかかる気骨には、ほとほと頭の下がる思いだ。今後の展望も、「楽曲プロデューサーとしての原点に戻りたいね。一曲入魂じゃないけど、色んな曲を作って色んな人に歌ってもらうというか、楽曲に対するアウトプットをあまり見ないで作っていきたい。あとは新人かな。発掘も含めてトライしたい。」という実に頼もしいもの。その一方で、シンガーとしての彼からは何とも“目から鱗”な回答が返ってきた。「多分またやるとは思うけど、すぐにはやらないかな。このアルバムで一区切りついたかなと思っているし、次のモチベーションになるまで時間がかかるかもね。それに次またやるからって宣言すると、本業になっちゃうでしょ?本業じゃなくて副業でやってるからこそ楽しめてる部分が大きいから、副業にしてたいの、俺。あとは今回のようなスタンスで今後作っていって、「あ、これ俺がやりたいわ」って思えばまたそこからスタートになるだろうね。そういった積み重ねが、アルバムになっていくと思うから。」どうやら今後も直感を第一に、シーンへと臨んでいくご様子。新たなる才能が暴発するであろう彼の未だ見ぬネクスト・ステージ。その幕開けの瞬間は、案外もうすぐそこまで迫っているのかもしれない。


◆room106 ALBUM REVIEW◆

1. intro ~welcome to room 106~

2. L.O.V.E feat. BENI
惹かれ合う男女をポップな曲調で小気味よく表現した配信楽曲。
プロデューサーとして多くの楽曲を手がけてきたBENIとのコンビネーションは実に軽妙で微笑ましい。

3. Miss My Baby
それぞれの道へと歩き出す男女を切り取ったD.I流切なソング。
彼の歌唱が織り成す爽やかな哀愁が、時間をかけて沁み渡る。

4. Dream Of You
その名の通り夢心地なサウンドを誇るコンテンポラリーなR&Bチューン。
D.Iと共に作詞を担当したYoko Hijiは、EXILEや東方神起らを手がける期待のやり手。

5. Fly Girl
『L.O.V.E』と同日に配信リリースされた1曲。
ボーカル・エフェクトを駆使するなど、アーバンさを全面的に押し出した作りに感服。

6. Baby feat. Tynisha Keli
ここ日本でも支持を得るアメリカの若手女性シンガー:Tynisha Keli客演。
潤沢なトラックに乗せて、英語詞を携えた二者のボーカルがスムースに絡み合う。

7. Day by Day
「これぞD.I」と思わず唸りたくなる様式美サウンドを散りばめたポップR&B。
ストレートな恋心を綴ったリリックのクオリティもアルバム随一。

8. Midnight
打って変わって、こちらは俗に言う“ベッド・タイムR&B”。
妖艶に揺らめく世界観と、気品を備えたリッチなボーカル・ワークに陶酔必至だ。

9. Maybe Crazy feat. May J.
本作中最も大衆的な位置に属する楽曲で、本人曰く「今のMay J.」。
メロディーの程よい清涼感が、駆け出しの恋を瑞々しく演出している。

10. Never can say good bye
歌詞を一般公募したことでも話題となった惜別ミディアム・チューン。
どこか郷愁を誘うサウンド群は、如何なるときも気取りを忘れない男の風流とも言うべきか。

11. Human Nature
Michael Jacksonの不朽の名曲をまんまD.Iアプローチでカバー。
昨年春には既にYouTubeで公開されていたため、発表時期で見ると三浦大知よりも早い試みだったことになる。

12. trigger feat. D.I / R.Yamaki Produce Project
彼と同じくシーンを支える辣腕:山木隆一郎によるコラボレーション・プロジェクトの一環。
クリエイター同士のハイ・レベルな化学反応は聴き物だ。



◆Official⇒http://daisuke-imai.syncl.jp/

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