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michico 『i do』

2012年06月25日 23:38

 
<アルバムレビュー>
【特集:T.Kura/michico】
MICHICO 『i do』 (2002/12/11)

1. it’s my turn
2. bounce baby
3. all your things
4. tha superstar feat. VERBAL from m-flo
5. 090...
6. badboy life feat. L.L.BROTHERS and BIG-O from SHAKKAZOMBIE
7. interlude
8. should i leave
9. jump
10. trivia
11. thank you
12. tha superstar (DJ WATARAI remix)
 このサイトを開設して5年。このアルバムについての見識をいつ書き記そうかと、一際慎重に思案を重ねてきた。今思えば、自分の言葉で伝えることに一種の抵抗すら感じていたのかもしれない。それぐらい、僕にとっては掛け替えのない大事な作品。

 ジャパニーズR&Bシーンにもようやく通念上のブラック・フィーリングが根付き始めた2002年の暮れ、当時アーティストへのボーカルディレクションやソングライティング業で着実に支持を伸ばしていたMICHICOが、いち歌い手として本作『i do』を発表。日本語と英語が隔たりなく入り混じるリリック、粘り気のあるオリジナルな節回し、そして、ヴォーカルを輝かせることに従事した緻密なサウンド・プロダクション―― 体内で血肉化した慣習をさらけ出すかのごとく、彼女はごく自然な発想と技法をもって、皆が揃って納得のいく”リズム・アンド・ブルース”への回答を提示してみせた。俗間で暗黙の内に出来上がったR&Bの定義をことごとくクリアし、それどころか、MICHICOの類い希なる手腕をも意のままに伝えた本作は、当時中学生だった一人の少年にも、雷に打たれたような鋭い衝撃と、以後の音楽鑑賞に作用するほどの多大な影響を与えることとなる。厄介なのは、本作で受けた超常的な刺激の数々が、年齢を重ねるにつれてハートの深い層にまで潜り込み、よりダイレクトな形で魅入ることになってしまった点。ここまで来ると、よし、宗派でも立ち上げるか、などと嘯くことだって何ら容易い話で、MICHICO=神格という絶対的な構図も、いつからか急速に脳裏へと芽生え、着生していった。

 ことさら個人的なエピソードにフォーカスを当てたくないのでこの辺りにしておくとして、僕がMICHICOの音楽においてもっとも信頼を置いているファクターに、誰にも類似しない歌声がある。常に情念のようなシリアスなオーラを纏い、彼女が言葉を発すると、それらが一瞬にして感情のニュアンスを作り上げ、曲をスリリングなまでに盛り立てる。それこそ宗教的な仕組みというか、喉ではなく魂で念じながら歌う、という表現が一番似付かわしいのではないかと思う。R&Bというジャンルならではの様式美を吟味する上で、曲を司るサウンドやメロディに目を向けることが一番手っ取り早い手法であることに異論はない。だがMICHICOの作品のように、ヴォーカリストが確かな技術と琴線に触れるほどの表現力を持ち合わせていればこそ、R&Bの概念にも人間臭い深みや悦びが生まれるのではないかと、僕は信じて疑わない。



 そんな屈指の歌声を誠実にバックアップしているのが、MICHICOの実の夫であるT.Kuraをはじめとするブラック・ミュージック贔屓なクリエイターの面々。海外からは、Destiny's Childらとの仕事で一躍時の人となったAnthony Dent(「jump」)や、当時彼のもとで経験を積み、後にシンガーソングライターとして大ブレイクするに至るKeri Hilson(同)もクレジットに名を連ね、意外どころでは以前から倉夫妻との親交があるbmrの敏腕編集長:丸屋九兵衛も、M-Qbator(「bounce baby」)の名義でリリシスト登板を果たしている。実験的な要素も含め、取り揃えられたサウンドはオーセンティックなR&Bの調べを事細かに追求し、正真正銘のドメスティック盤であることを一頻り忘れてしまうほどに完成されたフォームを呈している。音楽は感覚で楽しむのが一番――本作にくまなく行き渡った上質なプロダクションを味わう度に、そんな裏方からの余裕じみた声が聞こえてくるようだ。

 そしてここでも、MICHICO持ち前の先鋭的なセンスは炸裂している。たとえば、念仏のようなミニマルこの上ないメロディフレーズを広げた2ndシングル「bounce baby」や、終盤のフェイクが一気に胸を締め付けにかかる究極のバラッド「trivia」などでの婉美なメロディ・メイキング、また半ば挑発的に”MICHICO劇場”の開幕をアナウンスする「it's my turn」、愛しの彼への悲痛な思いを書き綴ったメロウなミディアム「090...」などにおいては、主にリリック面において表情豊かな存在感を露わにし、彼女に宿る絶対無比な器用さを決定付けている。もっともこの場合、寧ろMICHICOそのものが、楽曲のベクトルを自由自在にコントロールしていると解釈するのがずっと妥当かもしれない。現にどんなアーティストも、MICHICOという名のフィルターを媒介して、見違えるほどのアーバン気質にカラーリングされて来たわけだから、彼女の念入りなプロデュース・スタイルはこれまで時代を選ぶことなく、可能な限り有機的に結実を迎えてきたと言える。



 台頭するサウンドあれば、淘汰されるサウンドあり。聴き手のニーズが多様化し、瞬間的に持て囃される曲が横行する現代において、もし仮に何かを指標にしてジャパニーズR&Bの是非を掘り下げるとするなら、僕は迷わずこの作品を手に取るに違いない。どれだけ時を経ようと変わらずR&Bの神秘を授けてくれる本作は、これから先、きっとまだたくさんのことを教えてくれるはずだから。



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コメント

  1. YUTTY | URL | ignwylE.

    michico様~~!

    本当にこのアルバムは完璧そのもの!
    michico以上の女性シンガーはいないと思ってます。
    「all your things」「090...」「trivia」は特に本当にかけがない大好きな曲!いや、でも「bounce baby」も、「superstar」も「I'ts my turn」も大好きだ、、。全部大好きです!

    なんか、崇拝するmichicoの記事だからだと思うけど、イチケンの文章がいつも以上に固く、なんか違和感。w

    今度ぜひ倉夫妻飲みを開催しましょう。

  2. そうる2000 | URL | -

    長く聴ける名盤ですよねー!

  3. ケンイチ | URL | -

    >>ユッティ
    あなたはとうの昔に僕の嗜好を知っているかと思いますが、
    MICHICOが本当に大好きです。笑
    もっともっと色んな音楽を彼女の声で届けて欲しいんやけど、裏方に徹している今は厳しいのかな。。

    あと、文章に関しては、最近試行錯誤して色々やってるので、時として硬くなったり柔らかくなったりすると思います。ごめん!
    安定するまでもうちょいお待ちを・・・!

  4. ケンイチ | URL | -

    >>そうる2000さん
    間違いないです!
    記事にも書きましたが、声が抜群に良いんですよね。
    どこにもないグルーヴというか。

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