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Various Artists 『宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-』

2014年12月12日 21:27



<アルバムレビュー>
Various Artists 『宇多田ヒカルのうた (2014/12/9)

1. SAKURAドロップス / 井上陽水
2. Letters / 椎名林檎
3. Automatic / 岡村靖幸
4. Movin' on without you / 浜崎あゆみ

5. Flavor Of Life / ハナレグミ
6. FINAL DISTANCE / AI
7. Be My Last / 吉井和哉
8. 光 / LOVE PSYCHEDELICO
9. For You / 加藤ミリヤ

10. Stay Gold / 大橋トリオ
11. time will tell / tofubeats with BONNIE PINK
12. Keep Tryin' / キリンジ

13. Sanctuary / Jimmy Jam & Terry Lewis feat. Peabo Bryson

デビュー16周年の節目にリリースされた、宇多田ヒカル初の公式トリビュートアルバム。早い段階から世間の話題をさらっていた本作ですが、参加アーティストや歌唱楽曲の情報が発表されるにつれて期待値は爆発的に上昇。案の定、内容も手放しで楽しめるきわめて質の高い仕上がりでございました。

そもそも、制作サイドの意向がすこぶるご立派で、賛辞を送らずにはいらない。歌手ではなく音楽家。すなわち、宇多田ヒカルと同じシンガーソングライターとしての側面を持つ猛者ばかりを一堂に会させ、さらには楽曲を思いのままに、自由に解釈してほしいと提案。その人選に関しても、宇多田がかつて楽曲をカヴァーしたことのある井上陽水、「Addicted To You」などを手がけた米プロデューサーのジャム&ルイス、1998年デビュー組で言わば戦友の椎名林檎、浜崎あゆみ、そしてかねてから宇多田に憧憬の眼差しを送り続ける加藤ミリヤにtofubeatsと、宇多田に何かしらの接点や思い入れを有する面々を見極めた上で参加へと導いており、本人が歌唱する場面こそないものの、結果として宇多田ヒカルの濃厚たる15年が外部アーティストそれぞれの体裁と釈義だけで面白いぐらい如実に体現されているわけです。中には「ヒッキー以上に愛着を持っているんじゃないか」と推し量れるほどに楽曲と一体化を果たしているアーティストもいたりして、それはそれは目から鱗。「First Love」や「Can You Keep A Secret?」といったいくつかの代表曲がセレクトされていない事実も、アルバム全体における”めいめいの意志を尊重したスタンス”を一旦通過してしまえばまったく気にならないから不思議です(と言いつつ、続編に期待)。そうした感触に至るまでのリスナーの経緯もすべて掌握していたのだとしたら、尚更この企画を立ち上げた頭の切れるどなたかに感謝したい。内でも外でも、やっぱりヒッキーって愛されてんだなぁ。

そんな意義深い「宇多田ヒカルのうた」のすべてを、今回は順を追ってレビュー。原曲との相違点や個人的な感想を交えつつ、当サイトも宇多田ヒカルの音楽を多面的な角度から解釈してみようと思います。


1. SAKURAドロップス / 井上陽水
「少年時代」をはじめ数多くの名曲を世に送り出したご存じ、邦楽界の御大。抑揚をつけながらたゆたう独特の歌声が、原曲をすんなり踏襲してしっとりと失恋劇を演じる・・・のだと決めつけていた時期が私にもありました。実際は、サルサを下敷きとした本格的なラテン・サウンドに乗せて、陽水が意気揚々と妖艶なオーラを振りまくというもの。なるほどそうきたか。思えば「コーヒー・ルンバ」しかり、陽水氏はこの手のアプローチ得意だもんなあ。DOUBLEの「Rock The Party」にも参加していたラテンバンド:オルケスタ・デ・ラ・ルスの演奏は、アクティブな音使いでありながらシックにもまとまっているというちょうどいい弾け具合。冒頭からごちそうさまです。


2. Letters / 椎名林檎
かつて「東芝EMIガールズ」なるユニットを宇多田と結成するなど”ニコイチ”で語られる機会も少なくない椎名林檎は、かねてより造詣の深さをアピールしてきたジャズ系譜の解釈で勝負。ストリングスのスケールがまずとてつもないことになっておりまして、荘重さと緊張感の”雰囲気二枚使い”に精神がなかなか追いつかない。くわえて、林檎嬢のフリーキーな歌いっぷりもオリジナルの清潔感を良い意味でぶっ壊しており、もはやカヴァーであることを忘却するレベル。陽水同様、普段から芯の通った活動をしている何よりもの証明ですね。


3. Automatic / 岡村靖幸
ぶっ壊していると言えば、この方の再構築も負けず劣らず凄い。歌い出しの時点で狂気をはらんだ息遣いを発揮したかと思えば、宇多田詞曲の土台あっての名曲を限界すれすれまで”改築”。特に終盤で訪れる咆哮にも似たアドリブは間違いなく本作のハイライト。この人が操る退廃的な風情は、気だるい割にきちんとエスプリが効いているから好きだ。


4. Movin' on without you / 浜崎あゆみ
宇多田と同時期のデビューにして、一時は最大のライバルと称された浜崎あゆみ。原曲の疾走感はそのままに、ダンサブルなEDM調へと進化を遂げたそのサウンドは、本作の中でもとびきりアグレッシヴ。また、単純に新しさを突き詰めるだけでなく、歌唱の随所からは全盛期の頃の懐かしいニュアンスも見て取れるなど、まるで互いの歴史の長さを分かつかのような感慨深い仕様となっています。プロデュースには、レディ・ガガなど数多くの著名アーティストを手がけ、自身の最新作『Colours』にも迎え入れている米のプロデューサー:レッドワンが関与。


5. Flavor Of Life / ハナレグミ
ハナレグミは、元SUPER BUTTER DOGの永積タカシによるソロ・ユニット。アコギとピアノが織り成す閑寂たるサウンドのもと、力の抜けた柔和な歌声が光る今回のカヴァーでは、自身のパブリック・イメージを忠実になぞると共に、アンプラグドな領域における感傷の極致をきめ細やかに描写。もっとも後半には、環境音楽からのインスパイアと思しき分厚いシンセを舞わせ、デジタルでしか生み出せない質感との融合もそれとなく図られています。


6. FINAL DISTANCE / AI
セールス400万枚超えの2ndアルバム『DISTANCE』からリカットされたシングルを、エモーショナルな歌声に定評のあるAIが担当。ふくふくと感情が芽吹くコーラスを除いては、比較的オリジナルに忠実な出来。ただゴスペル仕込みのAIのヴォーカルが緩やかな旋律に跨がることで、神聖なエネルギーは著しい相乗効果を生んでおり、聴覚に流れ込む多幸感が半端じゃない。そこはかとなくオルタナティブな香りが漂っているのも、AIが歌ったからこその美点ではないかと。


7. Be My Last / 吉井和哉
元YELLOW MONKEYの吉井和哉は、悲愴モードまっしぐらの14thシングルをチョイス。当然、ギターの鈍重な音色が全面に強調されたロッキッシュなアレンジがなされており、原曲に臨場感や気迫を肉付けしたような聴き心地に。淡々とした歌い回しが何とも言えない背徳感を引き立てているあたり、長年培われた貫禄を感じさせます。


8. 光 / LOVE PSYCHEDELICO
世紀末から21世紀初頭にかけて集中的に人気を得るなど、宇多田との共通項も多いLOVE PSYCHEDELICO。そのダウナーなヴォーカルを本作で轟かせるにあたって、この楽曲チョイスはまさしくドンピシャであり英断。固定概念を華麗に飛び越えていく奔放な譜割り、そしてケルティックの要素も取り入れたフォーキーなサウンドが、荒涼とした牧歌的風景を演出します。カヴァーであろうとどこ吹く風。これぞ、デリコ・ワールドの最果て。


9. For You / 加藤ミリヤ
今年10月にリリースされたアルバム『MUSE』で「Automatic」を一足早くカヴァーしていただけに、本作でどう出るかが非常に気になっていたのが彼女、ミリヤ。試聴段階ではもっともオーセンティックな形でカヴァーしていたため、曲者揃いのラインナップの中で浮いてしまわないか少しばかり懸念していたのですが、これがまったくの杞憂でした。マッシヴなビートを敷いたトラックしかり、「Give Me A Reason」の1シーンを盛り込んだブレイクしかり、宇多田に対するリスペクトとヒップホップ/R&Bに準じた遊び心をたっぷり見せ付ける7分間。そもそも選曲が「For You」って。最高かよ。


10. Stay Gold / 大橋トリオ
ミリヤと同じく、過去に宇多田の楽曲(「traveling」)をカヴァーした経験のある大橋トリオ。多彩なジャンルを縦断してきたがゆえの帰結とでも言うべきか、本作ではピアノのみを用いたシンプルな解釈にトライ。雑味のない流麗な味わいを届けてくれるばかりか、訥々とした発声によって歌詞の意味合いがどんどん飛躍して聞こえてくるというミラクルこの上ない仕上がり。


11. time will tell / tofubeats with BONNIE PINK
次世代トラックメイカー/アーティストの筆頭株として頭角を現すtofubeatsと、「衣替え」でも共演したBONNIE PINKのコンビ。この音楽は、一体、何て形容すればいいのだろう・・・ハイブリッド?エレクトロニカ?もしくは新手のアンビエント?いや、もはやそんなことはどうだっていい。オンリーワンの奥行きを持つtofu印のトラックに、深呼吸をするかのように悠々と時を刻むBONNIE PINKのヴォーカル。まったくもって未体験でありながらふらっと琴線触れてくるこのソツのなささえあれば、例外なく一目置きますよ、僕は。


12. Keep Tryin' / KIRINJI
昨年、結成時からのメンバーであった堀込泰行が脱退し、バンド編成として新たなスタートを切ったKIRINJIは、変調なポップ・チューンとして知られる「Keep Tryin'」を。歌詞の切り口までもが独特で、まさしく宇多田節炸裂!といった具合の応援ソングなのですが、のどかなAORサウンドとリードヴォーカルを執る弓木英梨乃のエアリーな歌唱がオリジナルの浮遊感を的確に捉え、ものの見事にKIRINJI色へとアップデート。素朴ですが、カッチョいいです。


13. Sanctuary / Jimmy Jam & Terry Lewis feat. Peabo Bryson
アルバムの最後を飾るのは、大御所たちとの名仕事ぶりが世界中で愛されているプロデュース・チーム、ジャム&ルイス。今回、唯一の外国人枠を駆使せんとばかりに、15thシングル「Passion」のイングリッシュ版を担当しています。「A Hole New World」の歌い手として名を馳せるピーボ・ブライソンのソウルフルなヴォーカル・ワークは、ただでさえ深遠な原曲のそれを遥かに凌駕しており、解釈の自由度で言えばトップクラス。ジャムルイによるサウンド・アレンジがきわめてドラマティックな余韻をもたらすのも頷けます。



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